食事療法とがん

2023年12月5日お知らせ

 

1、がん治療で栄養療法は基本

  

 抗がん剤などの三大療法や免疫療法をする場合、栄養療法はそれがうまくいくかどうかの鍵を握ると言っても過言ではません。

 食品やサプリメントを含め、食べていいものを摂取し、悪いものを回避することです。食材によってはがん治療のアクセルとなったり、ブレーキの解除となります。

 食事の仕方や調理法、食器、さらにはライフスタイルについても言及し、栄養療法に必要な総論を提示したいと思います。

 

2、がんの原因

 

 がんの原因に関するいくつかの研究で、がん発症要因の1位に食べ物が挙げられています。2位がたばこで、その2つでがん発症要因の半分以上を占めています。喫煙以上に食事はがん発生要因であることを示しています。

 その他の要因として、ウイルス、職業要因、アルコール、汚染物質が知られています。

 栄養療法を貫徹するには、これら要因の排除も平行して行う必要があります。口に入れるものの選択はとても大切で、「病は口から入ってくる」という言葉もあるほどです。

 

3、がんの特性

 

 がんは次のような性質を持っています。栄養療法を理解するためにも必要な情報です。

 ①がん細胞の増殖を促進するいくつかの栄養素がありそれらを避ける必要があります。

 ②活性酸素やストレス、睡眠不足、慢性炎症が発症及び増殖要因となります。体に優しいライフスタイルや抗炎症を実践する必要があります。

 ③がん細胞では細胞内小器官のミトコンドリア機能が低下しています。機能低下の要因を把握し、それを排除する必要があります。たとえば水銀や鉛などの有害金属や一部の薬物はミトコンドリアの機能低下をもたらします。解毒のため飲水を心がけ、お通じをよくし、薬剤を選択する必要があります。

 ④がん罹患者は飢餓特性と称して、急激な体重低下がみられることがあります。毎日体重測定をして、体重が低下した際には主治医に相談する必要があります。

 ⑤がん細胞は過酸化水素を消去する酵素類が減少しています。高濃度ビタミンC点滴では、過酸化水素を発生させがんの治療としています。

 

4、避けるべき栄養素

 

 がん細胞はぶどう糖を増殖に利用します。精製糖質の過剰摂取はがん増殖を助長するので避ける必要があります。

 果糖やリノール酸、動物性脂肪(特に牛脂)は、コレステロール合成を促進し、その中間代謝産物はがん増殖を促進するので、これらの摂取も避ける必要があります。

 鉄分は、がん細胞に積極的に取り込まれ、増殖に利用されます。そのためレバーやあさり、シジミなど鉄を含む食品の過剰摂取を控える必要があります。

 アミノ酸の中でも細胞増殖に関係するロイシンを含むサプリメントは避けるべきです。

 ビタミンB12や葉酸はがん細胞増殖に使われる可能性があるので、サプリメントの摂取には注意が必要です。 西洋食では動物性脂肪や糖質の過剰摂取となりがちで、腸内細菌叢の悪化にも関連し、要注意です。そのため和食を中心にしたメニューを考えるべきです。

5、炎症と栄養療法

 

 がん発症の過程では慢性炎症が関係しています。発症後も炎症が続くと増殖を促進するので改善する必要があります。

 炎症は、睡眠不足、脂肪酸、高血糖、有害金属、トランス脂肪酸、細菌感染、活性酸素、紫外線などが促進します。

 腸内細菌叢が悪玉優位だと腸内で慢性炎症を誘発しますので、腸内細菌叢のコントロールも必要であり、そのために食物繊維やオリゴ糖を摂取する必要があります。

 抗炎症素材として、レスベラトロール、ピクノジェノール、EPA&DHA、アスタキサンチン、フコイダン、ビタミンE、ビタミンD、αリポ酸、コエンザイムQ10などが知られています。

 リノール酸代謝は炎症やがん増殖を抑える鍵になます。

 メタボリック症候群ではインスリンが高くなっていて、その場合リノール酸からアラキドン酸を経てプロスタグランジンE2の合成が促進され、がん増殖を促進します。

 アラキドン酸は細胞膜からも遊離し供給源となります。プロスタグランジンE2やアラキドンン酸の供給を抑制する素材としてEPA、クルクミン(ウコン)、アスタキサンチン、ビタミンE、CDPコリンなどがあり、有用です。

 ウコンは過剰摂取により鉄が入りこみ肝機能障害の要因となるのでクルクミンとして摂取する必要があります。DHAは抗がん作用があり、血糖を下げ抗がん作用もあるコロソリン酸の吸収を促進するため、その併用をお勧めします。 がん罹患者は、マーガリンやゴマ油などの比較的リノール酸含有量が高い食品や肉類などのアラキドン酸が多い食品を避ける必要があります。青魚や大豆、ゴマの摂取は有用です。

 脂肪酸4分画という採血で、血液中のEPAとアラキドン酸の比率がわかるので一度実施してみるべきです。

 

6、免疫と栄養療法

 

 NK細胞活性を高める食品として、舞茸やモズクがあります。βグルカンなど舞茸や酵母のサプリメント、きのこ系サプリメントAHCCなども活用するべきです。舞茸とモズクのポタージュスープお勧めです。

 乳酸菌にも免疫を上げる作用があるのでお勧めです。

 その他、ビタミンE、EPA&DHAも抗がん免疫を高めるので有用です。腸管免疫を高めるために、納豆を摂取するべきです。

 

7、食事法や調理法、調理器具、有害物

 

 がん罹患者は血糖値の上昇を緩やかにする必要があります。そのためには、血糖値の上がりにくい繊維質の多い食品から摂取するべきです。酢の物もお勧めです。野菜系のおかずを多めに頂くようにして下さい。塩分の過剰摂取もよくないので制限する必要があります。塩を使用する場合はミネラル塩をお勧めします。でも控え目にして下さい。

 炭水化物を含む穀類を高温で焼く、揚げるなどの調理をすると発がん性が指摘されているアクリルアミドが生成されることが知られています。焼く、揚げるなどの調理法をできるだけ避けて、煮る、蒸す、鍋の調理法を推奨します。

 アルミなどの金属シートを用いた調理を避け、缶詰類の使用も避けるべきです。鉄の調理器具も控えるべきです。貧血がある場合は、医師と相談して下さい。

 外食は栄養素が偏るため控えるべきです。外食の注意点は、油脂が多い、砂糖を使用する、アルミ鍋や鉄鍋も使われるので不向きです。頻回な外食は避けて下さい。

 菓子類に多いトランス脂肪酸も避ける必要があります。 添加物の多くは、正常な代謝を阻害する可能性があります。そのため加工食品ではなく、手作りの料理を摂ることです。

 

8、お勧め食品

 

 オーガニック野菜や果物、エゴマ油やシソ油、アマニ油を用いたドレッシングサラダ、酢の物、豆類、豆腐や納豆などの大豆製品、青魚、ココナッツオイル、免疫を上げる舞茸、やまぶしだけ、ニンニク、パパイヤ、女性系のがんに有用なアブラナ科のキャベツや白菜、小松菜、水菜、大根、ブロッコリー、カブ、解毒に使える玉ねぎや白ネギ、ゴボウ、オクラなどが活用できます。

 魚は小魚類をお勧めします。果物は、過剰摂取を避けることをお勧めします。

 

9、時間治療と栄養療法

 

 免疫活性はお昼前に高くなることが知られています。それに合わせてβグルカンなどの免疫系サプリメントや食品を摂取する時間を調整し、朝食時に舞茸やモズク、やまぶしだけ、青パパイヤを摂取することです。特に舞茸の味噌汁お勧めです。

 さらにがん細胞が鉄を摂りこむピークは21時なので、がん罹患者はその時間付近にレバーや肉、春菊、ほうれん草などの鉄を多く含む食品を摂取すると増殖に利用される可能性があるので、朝か昼に摂取することをお勧めします。

 

10、組み合わせと栄養療法

 

 サプリメントや食材は組み合わせにより吸収率が変わることが知られています。ビタミンCは鉄の吸収を促進するので、ビタミンCは朝か昼に摂取をお勧めします。

 前述の通り抗がん素材のコロソリン酸はDHAが一緒だと吸収がいいので併用をお勧めします。

 乳がんで使われるジインドリルメタンはビタミンEが吸収を促進するのでこれも併用をお勧めします。抗がん作用があるクルクミンは大豆レシチンと併用すると吸収が促進されます。また黒コショウの成分であるピペリンはビタミンやミネラルの吸収を促進するのでお勧めです。

 

11、ライフスタイル、その他

 

 睡眠不足があると糖代謝が悪化することが知られています。それが炎症の引き金となります。寝不足の解消は重要です。毎日のきちんとした歯磨きで癌リスクが3割ほど低減することも知られていますので、ぜひ励行して下さい。

 湯船につかるとヒートショックプロテイン(HSP)という免疫を高める物質が誘導されることも知られているので、湯船に入ることをお勧めします。アスパラガスの根に近い部分の成分がHSPを誘導することも知られています。

 運動は、発症後でも有用とする報告があり、お勧めです。 アルコール多飲はがん増殖に関係するので避けるべきです。特に乳がんでは気をつけて下さい。

 

12、まとめ

 

 がんの食事療法で大切なのは、がんの種類、がん罹患者の年齢や性別などを考慮して、個別にその治療メニューを組むことです。あるいは統合医療や栄養療法に詳しい医師を受診して、食べていいもの、いけないものを一緒に考えることです。

 血液検査などで代謝の状態、進行状況、リスクを把握しながら治療にあたることが求められます。

 繊細な補助療法であるため、栄養分野に詳しい統合医療医に相談しながら、食事療法を実践することが大切だと考えています。

LINEで送る

ページトップへ戻る

© 2013 Dr.TAIRA