ハートフルクリニックの平良です。
久しぶりに各論の先生方にお渡しするスライドが追加されました。
これまでNo.1からNo.31までだったタイラ経路図(代謝経路図)に新顔が登場・・・その名は「TCA回路」です。
ミトコンドリア内のTCA回路について細かく図式化しました。
これまでスライドNo.3のミトコンドリア代謝経路図を用いて、TCA回路を解説していましたが、TCA回路の細かい情報をNo.32のスライド、TCA回路で読み解くことができるようになりました。
TCA回路については、好気的解糖として知られていますが、健康体であればこのTCA回路は順調に時計方向に回転(代謝)されていますが、ミトコンドリア機能の低下、活性酸素、有害金属、低酸素、PI3/Akt/mTOR経を活性化する病態では好気的解糖が抑制され、嫌気性解糖が促進されます。
がん細胞では、TCA回路が抑制され、右半分が逆回転していることが知られています。
特にグルタミン→→→αケトグルタル酸→→(逆回転)→→クエン酸→→→脂肪酸、となることから、がん罹患者においては、グルタミンの摂取は控える必要があります。
ピルビン酸から順調にクエン酸に代謝され、さらにTCA回路を時計方向回転するためにはエネルギー物質のNADが必要になります。
NADはトリプトファンからB群の存在で合成されますが、ビオチンが不足するとその合成が阻害されます。
NADはビタミンB3からも合成されるので、その摂取が必要です。
ところが乳がんの場合は、NAD合成が多いと、ATP合成酵素を活性化する結果となり、がん細胞増殖につながる可能性があるので、注意する必要があります。
TCA回路は、複雑なので、各論や総論、あるいは基礎セミナーでお伝えできたらと考えています。
数ある代謝の中でエネルギー代謝は、疾患の発症や抑制、治療に関連する重要な分野なので、TCA回路の代謝経路図ができたことで、生化学的治療が加速することが期待されます。