タイラ経路図、No.1の解説、HMG-CoAからコレステロール合成まで。

2014年09月30日ATP ,お知らせ ,代謝経路図

ハートフルクリニックの平良です。

タイラ経路図No.1

今回は、タイラズメソッドに行ける治療の中心となるタイラ経路図No1(HMG-CoAからコレステロールへの経路)の解説をしたいと思います。

ここで・・・タイラ経路図とは・・・?
ハートフルクリニックの平良が1998年からサプリメント外来を実施し、その間蓄積した代謝スライドが2000枚を超えています。
その一部をUSBに入れて、タイラズメソッドの各論セミナーを受講された先生方にお渡ししています。
USB内のタイラ経路図は、非定期に増え続け・・・以前27種類だったのがそれに・・・嫌気性解糖、NFκBによる炎症のスライドを加えて、29種類となりました。

近々炎症を中心としたスライドを入れて30種類となる予定です。

それぞれのスライドはナンバリングしていて・・・これから私のブログでもその概要をお伝えすることにしました。

今回は、No1となる、HMG-CoA→コレステロールに至る経路について、解説を加えたいと思います。

ブログによる一般公開もさせて頂きます。
若干医学的な表現、専門用語も出ますが・・・ご了承下さい。

認定医記事(公開版)【タイラ経路図、No.1『HMG-CoAからコレステロールに至る代謝経路図』】

※認定医の先生方はスライドをご用意下さい。

1. HMG-CoAの合成
HMG-CoAからコレステロールやコエンザイムQ10が合成されますが、そのHMG-CoAは食事のアミノ酸、糖質、脂質から合成されます。
食事から合成されます。
アセチルCoA→HMG-CoAへと合成されます。その逆の合成(HMG-CoA→アセチルCoA)も可能です。
2. HMG-CoAからコレステロール合成
HMG-CoA→メバロン酸になり、その後いくつかの代謝産物を経て、スクワレンが合成され、最終的にコレステロールとなります。
スクワレンの過剰摂取でコレステロールが上昇することがあります。
メバロン酸から次の物質である5ホスホオメバロン酸に至る際に、ATPを必要とします。5ホスホメバロン酸はその下流で、コレステロールとコエンザイムQ10を合成するので、その2つの物質合成にはATPが必要になります。
すなわち、ミトコンドリアの機能が正常でない場合、ATP産生が低下するとコレステロールもコエンザイムQ10も合成が低下します。
HMG-CoA→メバロン酸に至る経路では、HMG-CoA reductaseという酵素が働きますが、その酵素の阻害薬が、有名なスタチン系(メバロチンなど)の薬剤です。
そのため、スタチン系薬剤を服用するとその下流の代謝産物すべてが合成を抑制されますのでコエンザイムQ10の合成量も低下します。
そのため、ミトコンドリアの機能が低下する結果となります。
高力価のスタチンは糖尿病発症リスクを増大させるという報告があり、ミトコンドリアの機能低下と関連があります。
ATPはインスリン分泌を促進するので、ミトコンドリアの機能低下→ATP合成低下→インスリン分泌低下→糖尿病リスクとなります。
HMG-CoA reductaseは、AMPキナーゼ(AMPK)により抑制されます。
その他、HMG-CoA reductaseはヒドロキシクエン酸、紅麹、コレステロール自身、トコトリエノールでも抑制されます。
スライド中のAMPKを活性化する素材は、HMG-CoA reductaseの抑制を経て、コレステロールとコエンザイムQ10の合成を抑制する結果となります。
インスリンと甲状腺ホルモン、コルチゾールはHMG-CoA reductaseを活性化するので、コレステロールやコエンザイムQ10の合成を促進する結果となります。
HMG-CoA reductaseの補酵素としてB3が必要なので、B3が不足するとコレステロールやコエンザイムQ10の合成が低下する可能性があります。
ビタミンB3は、トリプトファンからも合成されますが、体内に炎症があるとトリプトファンからB3の合成の前段階で代謝がストップする傾向にあるので、炎症がある人はB3が不足することも予想されます。
トリプトファンからB3(ナイアシン)の合成については、スライドNo4-1のところで、解説します。
果糖やリノール酸、動物性脂肪、牛脂、脂肪酸、インスリンはHMG-CoAの合成を促進する結果、コレステロールやコエンザイムQ10などの下流の代謝産物の合成量が増える結果となります。
コレステロールを合成する途中でできるメバロン酸はがん細胞増殖作用があるので、がんの方は、前述の物質の摂取を控える必要があります。
実際に牛脂はがん細胞を増殖させると報告があります。
牛脂はカレーのルーに多用されていますので、がん罹患者は要注意です。
ロイシンからできるHMBという物質は細胞増殖作用があり、さらにmTORの活性化をもたらすので、その摂取はがんの方には不向きです。
3. コエンザイムQ10合成
コレステロールが合成される上流でデカプレニル-4-ヒドロキシ安息香酸からコエンザイムQ10が合成されます。
デカプレニル-4-ヒドロキシ安息香酸からは同時にドリコールという物質も合成されます。
アルツハイマー病では脳内のコエンザイムQ10が上昇、ドリコールが低下しています。一説によると脳内の酸化物を抗酸化するために誘導されたとされています。
老化脳では、コエンザイムQ10は低下しています。
なので・・・脳の老化を防ぐためには、コエンザイムQ10が必要になることが予想されます。
コエンザイムQ10は、ピペリンやシクロデキストリンと併用して吸収をよくしているサプリメントがあります。
ドリコールはポリフェノールから合成されます。
老化脳ではポリフェノールが上昇、アルツハイマー病では低下していますので、アルツハイマー病に対するポリフェノールの有用性が示唆されています。
4. 脂肪酸合成
脂肪酸は、アセチルCoAから合成されます。
がん細胞ではアセチルCoAから脂肪酸の合成に至る経路が促進されており、脂肪酸が使われている可能性があります。
この脂肪酸合成を抑制することが、新しいがん治療の一つと言われてます。
クエン酸→アセチルCoAに至る酵素、ATPクエン酸リアーゼ(ACL)が、がん細胞では活性化されており、その酵素をクルクミンやEGCGなどが阻害します。
さらにアセチルCoA→マロニルCoAに至る酵素、アセチルCoAカルボキシラーゼもがん細胞で活性化されており、その酵素をAMPKが抑制します。
なので、AMPK活性化素材は、がん細胞における脂肪酸合成を抑制します。
AMPK活性化素材については・・・スライド参照。
すなわち、AMPK活性化素材はがん治療に使えます。
5. ケトン体合成
アセチルCoA→アセトアセチルCoA→アセト酢酸(ケトン体)
HMG-CoA→アセト酢酸(ケトン体)
ケトン体はこの経路から合成されます。
ケトン体ができているということは、HMG-CoAやアセチルCoAがたくさんある状態で起きうるもので、HMG-CoA reductaseが働いていない、抑制されている、B3が不足している(その背景に炎症がある)ことが考えられます。
HMG-CoA reductaseは小胞体にあるので、小胞体ストレスが原因になる場合もあり得ます。
小胞体ストレスは、クルクミンやフェルラ酸により抑制されます。
その他には、脂肪酸の過剰摂取、糖尿病によるインスリン抵抗性でもケトン体が増えます。

次回のタイラ経路図解説は・・・
合成までにも長い道のりを歩むコレステロール・・・そのコレステロールがどのように生体に利用されるか、どのホルモンへと変化するか、代謝経路図上で重要となる代謝は何か・・・について語ります。

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